相続と実家の売却B
空き家の譲渡には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」がありますが、
適用を受けられるのは、相続開始の日から3年後の年末までに空き家を売却した場合です。青木さんがこの話をされたのは残念ながら特例適用期限の2ヶ月後でした。
そこで、実際の取得費を確認することにしました。
長期譲渡所得に係る税率の内訳
所得税および復興特別所得税の税率 | 15.315% |
住民税の税率 | 5% |
合計 | 20.315% |
長期譲渡所得に係る税率は上の表のとおりです。
取得費が不明の場合、売却価格の5%の概算取得費とすることになるため、譲渡所得が大きくなり、税負担が重くなってしまう場合があります。
青木さんにそのことを伝え、父が自宅を取得したときの売買契約書その他の資料を探して取得費を調べるようにしましたが、なかなか見つからず、青木さんはいったん断念しました。
契約書の有無が税金の多寡に大きく影響するため、再度探してみるようにうながすと、1カ月後書類は父が経営していた会社の金庫の中から出てきたのです。
その後、青木さんは自身で確定申告を提出しました。
青木さんの長期譲渡所得に係る税金
ケース1/実際の取得費が確認できた場合
@売却金額 | 3700万円 | |
A取得費 | 土地代 | 2678万7000円 |
仲介手数料 | 86万3610円 | |
登記費用 | 33万9020円 | |
(合計) | 2798万9630円 | |
B譲渡費用 | 印紙代 | 1万円 |
仲介手数料 | 126万3600円 | |
境界確定費用 | 23万5440円 | |
処分費他 | 216万2148円 | |
(合計) | 367万1188円 |
譲渡所得=@―(A+B)=533万9000円(千円未満切捨て)
税金の計算(長期譲渡所得)
項目 | 税率 | 税額(100円未満切捨て) |
所得税(復興特別所得税を含む) | 15.315% | 81万7600円 |
住民税 | 5% | 26万6900円 |
合計 | 20.315% | 108万4500円 |
上の表は青木さん姉弟の今回の売却に係る確定申告の内容です。
契約書などが見つかったので、約2799万円もの取得費が控除でき、納付税額は約108万円で済みました。
ケース2/実際の取得費が不明だった場合
@売却金額 | 3700万円 |
A取得費(概算取得費)売却価格の5% | 185万円 |
B譲渡費用 | (合計)367万1188円 |
譲渡所得=@―(A+B)=3147万8000円(千円未満切捨て)
税金の計算(長期譲渡所得)
項目 | 税率 | 税額(100円未満切捨て) |
所得税(復興特別所得税を含む) | 15.315% | 482万800円 |
住民税 | 5% | 157万3900円 |
合計 | 20.315% | 639万4700円 |
もしも取得費が不明の場合、概算取得費はわずか185万円で税負担は約639万円となり、約531万円もの差が生じたことになります。
また、実家には父母や姉弟の荷物がそのまま残っていたため、実家の引き渡しまでに片付ける必要があります。
個人で処分すれば生活ごみとして費用も安く済みますが、処分を依頼する場合は一般廃棄物免許をもつ業者に依頼するため、処分費もかさみます。
青木さんの場合は、荷物が多すぎて処分が間に合わず、処分費が200万円かかりました。
やはり、生前整理・遺品整理は早めに行うことが重要です。
敷地の境界を明確にしておく、名義を正しくしておくなど、相続前にしておくべきことは少なくありません。
売却する場合は、早めに動くことで3000万円特別控除の適用が受けられるケースもあります。
生前にやっておくべきこと、対策の必要性を知ることが重要だと思います。