むくみD
今回からは、静脈性浮腫をとりあげます。
静脈還流障害による浮腫で、高齢者のむくみの原因で最も多く、深部静脈血栓に伴う急性のものと、慢性静脈不全により発生する慢性のものとに区別されています。
ここから少し、動脈と静脈の血液についてのご説明となります。
動脈の血液と静脈の血液は、色がまったく違っていて、見ればどなたでもすぐわかると思われます。
動脈には赤い血液、静脈には暗赤色の血液が流れ、身体検査などで採血されるのは静脈の血液で、「黒っぽい色だった」と思い出す方も多いことでしょう。
一方、健康な心臓から送り出された動脈の血液は、静脈の血液よりもはるかに赤く、全身を数秒で駆け巡ります。
ただし、一般の人は、動脈の赤い血液を見ることはほとんどありません。
血液は、肺で酸素をもらうと赤く変身します。全身に酸素を運ぶ役目は赤血球中のヘモグロビン(血色素)という物質が請け負っていますが、これに酸素がつくと真っ赤になります。
さらに、心臓からでる動脈の血液は、肝臓から運ばれてきた栄養をたっぷり含んでいます。
肝臓は、腸から吸収した栄養分を使いやすい栄養素に変えて心臓の近くにある下大静脈という大きな血管に放出するからです。
したがって、動脈の血液のおもな役割は酸素と栄養素の運搬ということになります。
人は酸素を吸って、肺から二酸化炭素を出します。この二酸化炭素を体内の細胞から集めてまわるのも血液の役割で、動脈の血液は細胞に酸素を渡すと同時に二酸化炭素を受け取り、静脈の血液に変わります。
水に溶ける老廃物も静脈の血液に溶け込み、いちど心臓にもどって動脈の血液になったあと、腎臓から尿として外に出ていきます。
つまり、いらなくなった炭酸ガスと老廃物が静脈の血液を通じて肺や腎臓に運ばれ、処理されているのです。
こういった、一連の血液のサイクルになんらかのトラブルがおきてしまうことで、むくみのはじまりにつながっていきます。