肩こりC
体の老化も肩こりと無関係ではありません。
体の組織は20歳前後をピークに老化し始めます。白髪やシワなどのように目で見てわかる老化は、中高年になって顕著になるものが多いのですが、体の内部の老化は、それよりずっと早くから静かに進行しています。
背骨や関節、筋肉の老化もその一つです。年齢とともに骨や筋肉が弱くなり、姿勢を維持する力が低下します。
体に無理な姿勢や運動不足が、首や肩の周辺組織にかかる負担をさらに大きくします。
なかでも肩こりと大きく結びついているのが、「椎間板」と呼ばれる組織です。
私たちの体を支えている背骨は、椎骨と呼ばれる骨が積み重なってできていて、椎骨と椎骨の間には、椎間板という弾力性に富んだ軟骨がはさまっています。
椎間板は水分の多い組織で、背骨の動きに合わせて自由に変形し、椎骨にかかる衝撃を吸収し、緩和しています。
椎間板がなければ、体を動かすたびに椎骨と椎骨がこすれ合って傷つき、激しい衝撃が脳を直撃することになります。
椎間板は加齢とともに水分が失われ、弾力性をなくしてクッションの役割が果たせなくなっていきます。
背骨に加わった衝撃を吸収しきれず、周辺の筋肉に負担がかかるようになります。
さらに、老化が進むと椎間板の上下の椎骨の間が狭くなり、椎骨同士がこすれ合うようになり、変形した部分が周囲の神経を刺激して痛みを生じさせる「変形性頚椎症」という病気になることもあります。
椎間板そのものがもろくなり、椎間板の中の組織(髄核)が飛び出して周囲の組織を刺激し、痛みを起こす「頸部椎間板ヘルニア」に発展する場合もあります。
老化は男女共通に起こりますが、女性には卵巣機能の低下という大きな変化が訪れます。
40代半ばから50代半ばにかけて、閉経をはさんだ前後10年間、いわゆる「更年期」と呼ばれる時期です。女性ホルモン、とくにエストロゲンが低下することで、自律神経の働きが不安定になり、心身にさまざまな影響が現れます。
体温調節や血液循環の機能の乱れやすくなり、のぼせや発汗、手足の冷え、頭痛、動悸、倦怠感などさまざまな不快症状が現れます。
肩がこりやすくなるのも、そうした特有の症状の一つです。女性はもともと筋肉量が少なく、正しい姿勢を保ちにくくなることも、肩こりに拍車をかけると考えられます。
また、女性ホルモンの減少が心のバランスを保つ神経伝達物質のセロトニン代謝を悪化させるため、イライラや不安、落ち込みなどの精神的な不調が現れやすくなります。ストレスも強く感じるため、肩こりを起こりやすくなります。
女性がとくに注意したい病気に、骨がもろくなる骨粗鬆症があります。
女性ホルモンのエストロゲンには骨量を保つ働きがありますが、閉経後は急速にエストロゲンが減少して、骨量が減少していきます。
骨粗鬆症になると骨折しやすくなります。骨折にもいろいろありますが注意したいのは、知らないうちに腰椎から胸椎を中心にじわじわと押しつぶされていく圧迫骨折です。
一度圧迫骨折が起こると、連鎖するように骨折が広がり、背中や肩にこりや痛みを生じることがあります。
腕のつけ根や太もものつけ根、手首も骨折しやすい箇所です。
肩こりだと思っていたら、肋骨を骨折していたということもあります。