- ウィズコロナのライフプランニング①
- ウィズコロナのライフプランニング②
- ウィズコロナのライフプランニング③
- ウィズコロナのライフプランニング④
- ウィズコロナのライフプランニング⑤
- コロナ禍のライフプランニング①
- コロナ禍のライフプランニング②
- コロナ禍のライフプランニング③
- コロナ禍のライフプランニング④
- コロナ禍のライフプランニング⑤
- コロナ禍のライフプランニング⑥
- コロナ禍のライフプランニング⑦
ウィズコロナのライフプランニング⑤
暮らしとお金 ケース5
吉岡さんは、40代の夫婦で、商店街にある自宅兼店舗で洋食レストランを経営しています。最初の緊急事態宣言の自粛解除後の売り上げは自粛以前の4割ほどになってしまいました。持続化給付金で赤字をカバーできずに、アルバイトの方にもやめてもらいました。二度目の緊急事態宣言も出てしまい経営に苦しんでいます。
状況把握のためのチェックポイント
- ・損益分岐点の確認
- ・最初の自粛前後の客単価・来店客数等の分析
- ・オーナーの個人資産との区分けはできているか
- ・今後も経営していく意思はあるか
コロナ渦における飲食店経営では、フェーズごとに考えなければなりません。まずは、自粛期です。自粛期は資金繰りがポイントになってきます。助成金申請、人件費削減などあらゆる手段を使い、経営を維持します。再び感染拡大が落ち着いてきて経営活動をしながらの「ウイズコロナ」では情報収集・分析がポイントとなります。
まずは、現状分析です。これは平常時でも行う経営診断の基本ですが、実際にできているお店は少ないようです。ちなみに、損益分岐点とは、利益=0となる売上高(飲食店なら客単価×来店客数)で、変動費と固定費からなる総費用線と売上高線が交わる点が損益分岐点となります。
総費用から上回った分が利益ということです。コロナ前は、コロナ前損益分岐点売上高、ウイズコロナ期では席数を減らさなくてはならないので、経営改善後損益分岐点売上高まで損益分岐点を下げる努力が必要です。
自粛前後で以前の客は戻ってきているか、売上の質の変化をつかみながらその先を予測します。

分析にはF(材料費=食材)、L(人件費)、R(家賃)というキーワードがあり、それぞれ売上に対して一定の目安があります。
飲食店の場合Fは30%、Lが10~20%、Rが10~20%とされます。Fは変動費にあたり、Rは固定費です。Lは、短期的には固定費ですが、売上に応じてアルバイトを増減するように変動費になる性質のもので「準固定費」とされます。
経営改善のセオリ―は変動費の割合(変動費率)、固定費をそれぞれ下げることです。すぐ検討すべきは、固定費の人件費削減になります。時間はかかるかもしれませんが、今後客数を減らして稼働率が下がることも見込まれるので、家賃の引き下げ交渉も行うべきです。変動費率の引き下げは、収益モデルを変える必要があります。ウイズコロナでは新しくビジネスモデルを再構築する覚悟が求められています。

ソフトランディングの廃業も選択肢
分析の結果、黒字が1万円でも続くようなら時間がかかっても改善の可能性があり、続ける意味があります。
しかし、赤字が続くようなら負債が増えていくだけなので、すぐやめるのが合理的ではありますが、少なくとも撤退ラインを意識しておきます。
個人で飲食店を経営している場合、事業で使っているお金と個人のお金をきっちり分離していない人も多く、ご自分の貯蓄をお店に入れてお店を続けようとしがちです。
結局無理な借金をして自己破産に至ってしまう、ということが最も怖いケースです。経営者もウイズコロナでは、情報を整理して新しい収益モデルを模索するなど、意識改革が必要です。赤字が膨らむだけ、客足の改善が見込めないよううえに経営への意欲がなくなってしまったり、後継者がいないのであれば思い切って事業を売却、廃業という選択肢もあります。
ライフプランの観点から経営という収入手段を見て、その見通しが立たないならば、店舗の土地・建物を所有しているのであれば、店舗をたたみ、不動産賃貸業を始める、そういった選択肢も可能です。