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- ウィズコロナのライフプランニング②
- ウィズコロナのライフプランニング③
- ウィズコロナのライフプランニング④
- ウィズコロナのライフプランニング⑤
- コロナ禍のライフプランニング①
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- コロナ禍のライフプランニング⑦
コロナ禍のライフプランニング④暮らしとお金 生活困窮と多重債務
新型コロナウイルスの影響で多重債務に陥る人が増加の兆し。
生活困窮の原因の一つに「多重債務」があります。自己破産は2003年をピークに減少してきました。これは、2006年改正貸金業法が成立し、年収の3分の1を超える借金ができなくなったことや、上限金利の引き下げ、週払い金の返還請求が認められたことが理由として考えられます。
しかし、2016年からは銀行カードローンの増加、過払い金請求が順次時効になってきたことなどが影響して微増傾向に転じました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で今後も増加が予想されています。
生活が困窮する主な要因
- 〇一人親方や職人、個人事業主など社会保障が手薄い
- 〇社会保障制度の知識があまりなく、年金未払いや障害年金・傷病手当金の手続きをしていない
- 〇家計を管理していないので、無計画にお金を使う。
- 〇高金利での借金(ローン)の知識がなく、多重債務に陥る。
自立支援相談支援事業の総合相談窓口での相談員として活動する中島さんは、多重債務を抱える人の相談にも数多く乗ってきました。
「中高年の一人親方などでもともと社会保障が手薄なうえ、収入があればあるほど使ってしまう人が多いです。仕事道具をカードローンで買った、などがきっかけで借金が膨らんでしまうようです。」
さらに、中島さんが感じているのは困窮に陥る原因として、社旗保障制度について学ぶ機会や場がなかったことが影響している点です。
例えば仕事で負傷したが障害年金など返済の催促が強い方を優先して、税金や国民年金が未払いのままになってしまっている、というケースです。
支援の第一歩は家計の把握からです。まずは、聞き取りをして大まかな収支状況を把握します。家計表(家計簿)をつけたことがないという人がほとんどですが、負担に感じない方法で「まずは1か月収支をつけてみましょう」と、その人に合うやり方を提案してみます。

家計簿アプリを使ったり、ノートに収支メモしてもらい、後で集計することもあります。家計表をつけて、それについての感想から家計改善のヒントを得ていきます。「家計を見るとその人の生活が見えてきます。『思ったより○○に使っていた』という感想が多く、この差異に着目し、どの支出を軽く見ていたかを推察します。」そしてどこから解決していくか優先順位をつけていきます。
家計の費目については平均値も頭に入っているため、それが多いか少ないかはわかっていても「ここが多いです」とは指摘はしません。
「『どうすればお金が足りるようになると思いますか』と問いかけて、まずは本人に考えてもらいます。『お酒を減らしてみようかな』『携帯の通信費を下げてみようかな』といった答えが返ってくるとかなりの確率で動いてもらえますが、与えられた答えですと動いてもらえないからです。」

中島さんが留意しているのは、「この人もわかってくれないな、と感じさせないこと」だと言います。
「生活困窮者への支援は、通常の相談に比べ、よりカウンセリング力が問われると感じています。その人の立場に立って一緒に悩む姿勢が大切です。
また、傷病手当金など利用できそうな社会保障制度の情報提供をするのも大切な役割となってきます。とくに、障害年金についての知識は必須です。」
多重債務が明らかになることもあり、改めて「債権者聞き取りシート」に整理することも大切です。
家計の安定という目的から債務の免責や軽減も一つの手法として有効だと判断すれば情報提供をします。このシートは、法的手続きによる債務整理が必要になった際に弁護士等が書類作成をする基礎資料にもなります。
法テラスや弁護士会、自治体の窓口などに相談や手続きに同行しサポートすることも多いので、通訳のような感じで、法律用語など難しいと思われる言葉はなるべくわかりやすい言葉にします。
法的手続きには半年ほど時間がかかるため、家計改善にも並行して取り組んでいくことで、多くの人が返済額が減り、精神的な負担も軽くなることで家計改善にも前向きになるといいます。
ただし、自己破産や個人再生をすると官報に指名が記載されるため、それを狙うヤミ金業者から新たな融資の勧誘がある可能性もあり、これには注意を払う必要があります。
本人にも折に触れ必要最低限の社会保障や金利の知識などについても根気よくを、心がけます。

押さえておきたいキーワード
自己破産…債務の返済ができなくなった個人・法人が裁判所へ申立て、決定を受けて開始される手続き。免責許可の決定が確定されると、破産手続き後の借金や、子どもの養育費、税金、罰金などの例外を除き、債務を返済する必要がなくなる。財産の処分や職業、資格が制限される。信用情報機関に事故情報として登録される。
個人再生…民事再生法に基づき債権者の多数の同意と裁判所の認可を得て借金を大幅に減額する手続き。住宅ローンは対象とならず今までどおりの支払い継続が必要となるが、家を失わない点がメリット。約5~10年信用情報機関に事故情報として登録される。
任意整理…貸金業者や金融機関などの債権者と私的に交渉して、借金を無理なく返済できるように整える手続き。金利の引き下げができたり、月々の返済額を見直して最大で5年程度の期間で返済が可能となるようにすることができる場合もある
(ヤミ金融についての通報・相談先)
警察 消費生活センター 日本弁護士連合会 日本司法書士会連合会
(登録貸金業者に関する苦情・相談先)
日本貸金業協会 国民生活センター