- ウィズコロナのライフプランニング①
- ウィズコロナのライフプランニング②
- ウィズコロナのライフプランニング③
- ウィズコロナのライフプランニング④
- ウィズコロナのライフプランニング⑤
- コロナ禍のライフプランニング①
- コロナ禍のライフプランニング②
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- コロナ禍のライフプランニング④
- コロナ禍のライフプランニング⑤
- コロナ禍のライフプランニング⑥
- コロナ禍のライフプランニング⑦
コロナ禍のライフプランニング③暮らしとお金 生活困窮と病気
働く意思があっても体が動かない、ひきこもり状態の長期化
精神疾患が原因でひきこもり状態になってしまい、経済的にも困窮する、あるいは困窮する危険性がある人もいます。内閣府では、普段は家にいて趣味に関する用事のときだけ外出する人を「準ひきこもり」、近所のコンビニなどには出かける人や家や自室からほとんど出ない人を「狭義のひきこもり」、その合計を「広義のひきこもり」と定義しています。
40歳以上64歳以下のひきこもり推計数は「広義のひきこもり」で61.3万人にのぼっています。ひきこもり状態になってから7年以上という人が半数近くを占め、期間も長期化の傾向にあり、実際にはさらに多いと考えられています。
生活が困窮する主な要因
- 〇仕事による収入がない
- 〇傷病手当金が終了した
- 〇障害年金などの社会保障給付を受けていない。
- 〇親が他界して収入が途絶える(あるいは減る)
- 〇親が介護施設に入居した
- 〇うつ病などが原因で離婚した
- 〇貯蓄がない
- 〇本人の老齢年金が低額
ひきこもりの状態では仕事ができず、経済的な問題が生じます。病気で仕事を求職したものの、傷病手当金が終了し、障害年金は出ない、貯金がなくなるなどで生活が困窮に陥ることがあります。
親と同居していて生活が成り立っていても、親が要介護状態になって高齢者施設に入所したり、死別したりすると、状況はさらに厳しくなります。
働きたい、働かなければという気持ちが強い人も多いのですが、気持ちとは裏腹に体がいうことをきかないというケースも少なくはないです。
本人も親も、ひきこもりの期間が長引いたり、年齢を重ねたりするうちに気力体力が低下し、社会との接点がなくなっていきます。
家族からのSOSがなければ支援が届きにくく、孤立しかねません。

こういったケースの相談内容で多くみられるのが、ひきこもりの子を抱える親からの、子の将来についての相談だといいます。
本人は、仕事をして収入を得なければいけないと思う反面、少額では意味がないとも考えがちになるようです。アルバイトも、障害者雇用枠での就職も嫌で、就労支援にも消極的になるケース。現実を受け入れたくない、認めたくない、自分は障害者ではないという思いが強く、障害年金、自立支援医療、障害者手帳などの活用に拒否反応を示すことも少なくありません。
こういったケースでは、親が資産を遺せるか、子の年金など収入はどの程度か、手続き面で必要なことは何かを探りながら、具体的な提案を考えます。

確認しなければならない支援ポイント
- ①親の資産・負債を確認
- ②家計から、親がいくら金融資産を遺せるか確認
- ③親が要介護になった場合の住みかえの必要性を確認
- ④本人の収入と住まいの確認
- ⑤相続についてほかの相続人との調整や準備
- ⑥親の死亡後の子のサポートについての検討
- ⑦子の老後をプランニング
①親なき後の一人暮らしの年数は?
現在の年齢 | 平均余命 | 想定存命年齢 | |
父 | 59歳 | 32.86年 | (い)89歳 |
長男 | 32歳 | 50.09年 | (う)82歳 |
父 | 59歳 | 24.83年 | (あ)84歳 |
※想定存命年齢は小数点以下四捨五入とする
長男の一人暮らしは今から(え)33年後に始まるものとする。
→長男が(お)65歳の時
長男の一人暮らしの年数は(か)17年間となる
②親なき後の収入は?
老齢基礎年金と年金生活支援給付金の合計で月額6万円とする
③親なき後の支出は
費目 | 金額(月額) |
食費 | 50,000円 |
水道光熱費 | 10,000円 |
通信費(スマホ・プロバイダ) | 9,000円 |
社会保険料 | 4,000円 |
NHK受信料 | 1,200円 |
医療費 | 5,000円 |
日用品・雑貨 | 6,000円 |
住居費(固定資産税等または家賃) | 50,000円 |
合計 | 13万5,200円 |
④不足額の試算
一人暮らしの年数は(き)17年
収入は月額(く)6万円
支出は(け)13万5,200円
月の赤字額(こ)7万5,200円
不足額(さ)7万5,200円×12か月≒1,534万円
仮に月4万円を30年間貯金した場合、4万円×12か月×30年=1,440万円になる
平均余命を32歳男性(加藤さん)本人が一人暮らしする年数(親の助けなしで生きる年数を計算してみました。親なき後の収入は、障害年金、老齢基礎年金、年金生活者支援給付金などを想定し、不足額を算出してみました。
親が遺せる預金や死亡保険金などがあれば考慮します。
このケースでも約1500万円が不足しますが、月4万円を30年間貯蓄すれば、元本だけで約1440万円が準備できます。
アルバイトで月40時間程度働ければなんとかなるといった、具体的なプランを提示することで目標をもちやすくなります。
公的年金については、未納のまま、あるいは免除を受けるというケースも多いですが、老後の柱になるものなので、可能な限り保険料を納めたいものです。

また、現状の家計については不安が膨らんだり、家庭内暴力を受けたりしてストレスが重なり、親が買い物依存症になっている例もありますので、隠れた問題に気付くことも重要です。
親の相続や、親の死後の資産管理にも留意してみます。
親はひきこもりの子に自宅や金融資産を優先的に遺したいと考えますが、他の子が納得してくれるとは限らないので、早めに協議することを勧めます。
必要があれば資産の管理を頼んでおく、民事信託や生命保険信託の活用を提案するなど、対策についても考えておくことが必要です。
甘えや怠けからひきこもっていると決めつけないこと、本人や家族を追いこめてしまわないように本人や家族が動き出すきっかけの一つをつくれれば、それで十分だと言えるケースです。
少額でも働いて収入を得る、あるいは医師の診断を受けて障害年金を受給するなど、なんとかなるかも、といったポジティブなイメージを持ってもらうことが大切です。
